北上市立公園展勝地

 北上(きたかみ)というと「北上夜曲(きたかみやきょく)」を想い浮かべる人も多いだろう。この地には、どことなくロマンの香りのするところがある。旅人という言葉がよく似合う北上(きたかみ)の春は、北上(きたかみ)市立公園展勝地(てんしょうち)のサクラが運んでくる。展勝地(てんしょうち)の名は、北上(きたかみ)の東にある陣ケ丘(じんがおか)からの眺めが素晴らしいところから、展望のきいた景勝の地の意味からきている。

大正9年に、故沢藤幸治(さわふじこうじ)(元黒沢尻町長)が発起人となり、民間団体「和賀展勝会(わがてんしょうかい)」が設立され、サクラの植栽が行われたのが、この公園のサクラの始まりである。翌大正10年に開園し、途中北上(きたかみ)川の洪水などで大きな被害にあったが、地域住民の情熱で復興し、本年で開園76年を迎えるに至った。

 サクラの見所は、北上(きたかみ)川にかかる珊瑚橋のたもとから南へ約2キロにわたって続く桜並木である。北上(きたかみ)川からのさわやかな風を受けながら、東北の春を感じてほしい。

 北上(きたかみ)市立公園展勝地(てんしょうち)には、293ヘクタールに約1万本のサクラが咲き誇る。桜並木、陣ケ丘(じんがおか)を中心にソメイヨシノが約2000本、男山、保全林などにベニヤマザクラなどが約1500本植えられている。そのほかに、園芸種としてサトザクラ、野生種にエドヒガン、シダレザクラ、カスミザクラ、マメザクラがある。

 毎年4月中旬から5月初旬までは「きたかみさくらまつり」が開催される。満開のサクラの下、北上(きたかみ)川舟下りや遊覧ヘリコプター、民俗芸能の公演、消防放水競演などのイベントも多彩で十分楽しめる。また、桜吹雪の中をのんびりと歩く馬車も観光名物となっている。5月初旬には、サクラと入れ替わるように10万本ものツツジが咲き始め、約1か月間、初夏の訪れを満喫できる。また、公園周辺には、みちのく民俗村やサトウハチロウ記念館、市街地の中心部には、日本現代詩歌文学館など観光スポットも多く、時間のある人は少し足をのばして歴史と文学の探訪をしてみるのもよいだろう。

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