ホオノキ

樹木の生活を読む
ホオノキの生育は2段構えの戦略を持っている。花をつける枝,すなわち花枝では花ばかりつけ,一方,花をつけない枝,生長枝は2次枝を出し生長してゆく。この生殖と生長の作業分担は数年続くが,いづれ花枝は枯れ,生長枝は花枝に変身する。ホオノキの巧みな生長を見てゆくことにしよう。
萩原信介 国立科学博物館付属自然教育園研究官

種子散布
10月中旬,高山から始まった紅葉が山麓に降りてくる頃,ホオノキは梢に鮮やかな緋色に染まった握り拳大の集合果をつける。それは,まるで空を飛び交う鳥たちに自分の居所をあらかじめ宣伝しているかのようだ。葉が落ちきった頃,茶褐色に完熟した実は,乾燥した秋風にさらされ厚い果皮の縫目を少しずつ開いてくる。そして,朱色の皮をかぶった種子を覗かせる。やっと取り出せるようになった種子はキツツキ,ゴジュウカラ,カラスなどによって食べられるが,中にある黒く硬い核は消化されず鳥たちによって遠くに散布されることになる。
