オオバコ

私たちの足元で生きる草

 オオバコは,日本列島を南北に広がって分布するばかりでなく,山岳道路の建設などによって低地から標高2500メートル付近の高地にまでも実に広く分布している。オオバコは私たちの生活圏内の身近な所に生育していることから「人里植物」と呼ばれている植物のひとつに数えられる。

松尾和人 北海道大学環境科学研究科研究生

やや硬い土壌を好むオオバコ  

 オオバコが大きな群落をつくることができるような場所は,私たちの周囲から徐々に減りつつあるものの,それでも路傍,芝地,グラウンドなど人間によって持続的に攪乱あるいは管理されているような所では容易に見ることができる植物である。特に農道やグラウンドの周縁部など人や草の踏みつけが比較的多い場所がその代表的な生息地であろう。代表的な生育地の1つである農道で,道を横切って連続的に50cm四方の方形区を設置し,この植物のくわしい生態や分布状況を調べてみた。方形区内に生育する植物の種類や草丈,被覆面積などを調べ,地表面での光の強さや踏みつけ度合いの目安となる土壌の硬さを測定して,オオバコの出現状況や生育の様子と照らし合わせてみた。そうするとオオバコは道の中央部付近やわだちの周縁,土壌の硬さが中くらいの場所にもっとも多く生育していることがわかる。このような所では,裸地化した部分も多く,それでもシロツメクサ,スズメノカタビラなど草丈のあまり高くならない植物とともに生育している。また,群落の高さもせいぜい10cm程度で日当たりも良好な場所である。車や人の通行がより頻繁な所では,わだちも踏み固められ,その中には矮小化したスズメノカタビラやオオバコがわずかに見られるようになる。踏みつけの少ない道の両側では土壌硬度も小さく,他の草本植物の生育も旺盛になり50cm四方の方形区内もこみ合ってくる。また,群落の高さも20~30cm,時として50cmくらいになる。このような所ではオオバコはヨモギなど草丈の高い植物と競合するためか優勢な植物にはなれず,そういった群落の境界付近では生育できても群落中央部まではほとんど侵入できない。

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