ホタルブクロ

花の進化の実験

 日本には3種類のホタルブクロが自生している。狭義のホタルブクロの他に高地に生えるヤマホタルブクロと伊豆諸島にのみ産するシマホタルブクロがある。これら形態上の変異のうち,シマホタルブクロの花の小型化は,送粉昆虫との関わりが指摘されている。

井上健 信州大学教養部助教授

ホタルブクロの変種

 日本で一般にホタルブクロと呼ばれている植物中には,母変種であるホタルブクロの他にヤマホタルブクロとシマホタルブクロの2つの変種も含まれている。

 ホタルブクロは花が淡紅色~白色をし,萼裂片の間に反り返る附属片があるのに対して,典型的なヤマホタルブクロでは花が濃紅紫色をし,萼裂片の間に附属片がなく,また分布域も中部地方の標高の高い地域に限られている。しかしながら,これらの特徴は集団によりある程度まとまっているものの,集団中の個体間でも多少の違いが受けられる。そのためホタルブクロとヤマホタルブクロの区別は,しばしばはっきりしない。  シマホタルブクロは伊豆諸島に分布するホタルブクロの変種である。伊豆大島産のものはやや中間的な性質を示すが,本州のホタルブクロに比べて,花が小さくたくさんつき,葉の幅が広く,葉に毛が少ないなどの特徴がある。シマホタルブクロの花の小型化は,花粉を媒介する送粉昆虫が小型であるためと考えられる。

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