タマノカンアオイ

キノコに化けた花?
タマノカンアオイは,他の花と違って根際に花をつける。かすかな異臭を放ちながら咲いているその姿は,熱帯アジア原産の世界最大の花,ラフレシアを連想させる。この奇妙な花には,どんな昆虫が花粉の媒介に訪れるのだろうか。
菅原 敬 弘前大学理学部助手
タマノカンアオイの花と受粉
暗紫色の花の内部には直立した花柱と雄しべがみられる。柱頭と約は,空間的に離れ,たがいに成熟の時期が異なり,柱頭は,葯の裂開に変わって花粉を受け入れることができる(雌性先熟性)。葯は花被の開出から1~2日ほど遅れて内側がまず裂開し,それから1~2日後に外側の約が花粉を放出する。花粉の放出を延ばすことで雄性期を長くしている。これは,花粉を媒介する虫の訪花頻度が少ない花にとっては重要なことである。このようにタマノカンアオイは同花受粉をできるだけ避け,受粉に何らかの助けを期待している。これは,野外での結実の程度や人為的授粉実験からも推定される。
