利尻島

はるか最北の日本海上の島、利尻島。この島に貴重な自生のチシマザクラの群落がある。利尻山の600メートル付近から800メートルぐらいの斜面に咲いており、今まで人目に触れることもなくひっそりと咲いていた。サクラといえば観光名所になっている所が多いが、この利尻島のチシマザクラは人里から離れた孤高の存在だ。

大空沢(おおからさわ)入口から約3時間ほど歩くと標高がぐっと高くなり、雪がようやく消えたところに出たばかりのエゾエンゴサクやザゼンソウが見られる。そして、両側の稜線も高くなって眼前には、多くの登山家たちを魅了してやまない利尻山(りしりさん)の西壁が立ちはだかり、右側に取り付きの目印となる赤いテープがまかれた大きなマツの木が見えてくる。その下の踏み跡をたよりに傾斜を登るが、雪が残っていることもありコースを見失わないよう注意が必要。ダケカンバやチシマザサが生い茂る斜面には、ヒメイチゲやオクノカンスゲが咲き目を楽しませてくれる。10分ほどで群落の下部となるが、群落の中心はもう少し上部にあり軽い山登りを楽しみながらの野趣あふれる花見は、群生地からの大海原と利尻山(りしりさん)の眺めとあわせて最高である。
チシマザクラはミネザクラの変種で、利尻山仙法志(りしりさんせんほうし)第2稜の標高600メートル付近から800メートルほどの斜面に500本ほどが点在している。花期は6月上旬から中旬までのごく短い期間で、ほとんど人目にふれることなくその可憐な花を散らし、他の木々に埋もれてしまう。
